「ザンビ」という言葉が示すもの
0.はじめに
舞台ザンビのネタバレを盛大に含む内容となっている。
また、プロジェクトの全貌が明らかになっていない状態でこの記事を書いているので妄想話程度に受け止めてもらえればな、と思う。
1.なぜ「ザンビ」という名称なのか
「ザンビ」、聞き慣れない言葉である。映像にもある通り内容はホラーでありゾンビらしき存在も確認できる。なぜ「ゾンビ」ではなく「ザンビ」なのだろうか。
・「ゾンビ」の語源に注目させたかったため
「ゾンビ」は南アフリカで広く信仰されている「ンザンビ(Nzambi)」*1に由来する。アフリカに存在するンザンビを信仰する宗教は、奴隷がハイチなどの中米に連行されるとともに持ち込まれ、ヴードゥー教へと変容していった。そしてンザンビもヴードゥー教の呪術によって生み出される「ゾンビ」という存在に変容していったのである。「ザンビ」という言葉と「ンザンビ」という名称は酷似している。何らかの関係性があることは確かだろう。
・文化人類学的背景を作品に取り込むため
「ゾンビ」というと例えばバイオハザードのようなゾンビvs人間の構図で描かれるゾンビを連想することは容易である。しかし「ザンビ」にすることで「ゾンビ」を想像させつつヴードゥー教やアフリカの諸宗教へと導く言葉できる。「信仰」という言葉を作品の中で活かしつつ、単なる「ゾンビを扱った作品」ではなく文化人類学を絡めたより広がりのある作品にするためにあえて「ザンビ」という言葉を用いのではないか。
2.なぜカタカナなのか
・「ゾンビ」という言葉を連想させるため
上記にもあるように「ゾンビ」の語源として、または「ゾンビ」という存在を連想させるには「ザンビ」はカタカナ表記であることが妥当である。
・複数の意味を持たせるため
ザンビプロジェクト始動時の映像では、カタカナ表記の他に「残美」という漢字表記が用いられている。ここでは信仰の固有名詞として用いられてる。
しかし、舞台ザンビにおいて「残美信仰」は一度も劇中に登場しなかった。
では舞台版ザンビの「ザンビ」を漢字表記するとしたら何になるだろうか。私は「残日」という表記を推したい。舞台ザンビでは登場人物たちはザンビ感染の疑いがかけられたために、特別避難所で7日間の拘留を命じられる。劇中では「あと数日耐えればここから出してもらえる。」という趣旨のセリフがある。このように7日間という期間が物語では重視されていること、時間経過とともに物語が進行していくことから「美」ではなく「日」がテーマなのではないかと推測する。
3.まとめ
もし今後映画やドラマ、小説化(可能性はなくはない)などプロジェクトが進行していく中で「ザンビ」という言葉の持つ意味がどんどん増えて行ったら面白いなと思う。
【参考文献】
岡本健 2017 『ゾンビ学』 人文書院
立野淳也 2001 『ヴードゥー教の世界ーーハイチの歴史と神々』 吉夏社
*1:全知全能の神。転じて不思議な力を持つものの呼び名になっている。その対象は人、動物、物など多岐にわたる